輪島学
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輪島の郷土食/冬編のお刺身の写真 輪島の郷土食
輪島の郷土食/夏編
郷土食TOP/秋編/冬編/夏編
■輪島の郷土食/夏編 平成19年6月21 18:30pm〜 まだら館にて

 輪島21研の6月例会は、平成19年6月21日(木)夕方6時30分より、「まだら館」にて開催された。能登半島地震のため延期になっていた総会がまず開催されて、今年度事業計画や予算などが審議された後、懇親会を兼ねて行われた。
 
今回は「輪島の味覚・夏編」をテーマに、「冬編」に引き続き輪島の郷土料理についての認識を新たにしようという試みである。輪島の代表的な夏の食材である、サザエ、なす、ツンノメ、そうめんなどがメインとなって、輪島の食文化の豊かさを感じさせるものであった。

【前菜】
もずくの酢和え・バイ貝
輪島の郷土食/夏編・もずく酢和え
 もずくは代表的な夏の海藻と言えるが、おいしいのは酢のものに限ると言ってもよい。暑い夏で食欲の落ちたところでも、口の中をさっぱりとさせて、さあ食べるぞという気にさせる。もずくのみを酢に和えても十分食感を楽しめるが、今回はさらにれんこん、きゅうり、テイ貝が添えられていて、口当たりもよく、色合いもさわやかであった。

●夏の好物バイ貝

 バイ貝は比較的どこの海でもとれる食材であり、特に富山湾が知られるが、輪島の海でもよく採れる。楊枝を使って一個ずつ味わうが、身の部分のややしこしこしたところとさらに内臓部分の苦味の混じったところの調和を楽しむというところだろうか。夏場のビールのつまみに好適な食材で、好物にしている人も多いだろう。

【高価なあわび】
輪島の郷土食/夏編・アワビの刺身
 夏の食材としてあわびがある。一匹丸ごと形を保ったまま薄く切って出され、一枚ずつたれをつけて味わう。今回のたれはあわびの肝と酢味噌である。あわびの形だけを見ると、これを最初に食べてみようと思った人は、よほど勇気のある人か好奇心の強い人だったのではないかと思われるぐらいである。大変高価でもあり、いつでも食べられるというわけにはいかない。言わばハレの料理のひとつで、こうした会での話題にもなるものであろう。この日の飾り付けには、きゅうりをいかりの形(若しくは釣り針とも言える)にカットしたものが添えられていた。

【お造り】
サザエ、ヒラマサ、ツンノメ
しその葉と大根の千切りが妻。特にツンノメは氷で冷やされている。
輪島の郷土食/夏編・刺身
夏が旬のサザエ

 サザエは貝のまるごと出されて、身を食べやすいように刻んである。特有の形をしているから、料理の際に身を取り出すのにも技術を要する。はしで一切れずつつまんで、醤油たれで食べる。しこしこしていて、癖もなくさっぱりした味である。足の部分はコラーゲンを含むためコリコリして固いが、奥の方の身はやわらかい。輪島でのサザエの旬は春から初夏であり、旬の味を現地で直に味わえるのがうれしい。

 この後、焼き物でも出されるが、焼き物と造りのどちらがおいしいかを決めるのはむずかしい。さっぱりした味を好む向きには造りの方がお勧めだろう。夏向きだから、冷やした日本酒とも相性がいいのではないだろうか。

夏の定番ヒラマサ

 ヒラマサはブリにとてもよく似ているが、本当はアジの仲間で、通常暖かい海に生息する。釣りをする人には釣り甲斐のある魚なのだろう。北陸はブリがいわば魚の王者というところだが、これは寒ブリといって冬に脂が乗っておいしいので、夏はヒラマサがいい。味もブリに似て脂が乗っていて、ふくよかである。やはり刺身が一番だろう。これをつまみながらビールを飲むのが、夏の食の定番とも言えるのではないか。

ハチメの一種ツンノメ

 ツンノメは、大変めずらしい名前で呼ばれるが、いわゆるハチメの一種とのことである。なぜそのような名前で呼ばれるのか、また輪島で特有の呼び名なのか、興味深いうんちくの対象になりそうである。身は白身で、味わいは淡白でこりこりした食感である。この味を引き立てるのに氷で冷やして出される

 ハチメと言えば、ヤナギバチメ、茶バチメ、黒バチメ(メバル)など種類が多く、この地域ではどれもハチメで、常に食卓にのぼっていると言える。煮物や焼き物が多いが、旬の刺身は地元ならではの味わいである。

【煮物】
なすのいしる煮
輪島の郷土食/夏編・なすのイシル煮
 今回のメーン・ディッシュに位置づけされてもおかしくない料理である。
なすは大変育てやすい野菜と言われて、家庭菜園で収穫する人も多いかもしれない。夏の味としても食欲の低下する夏場の大切な家庭の味であり、子どもの頃の思い出の味にもなっているだろう。
 今回は大振りの長なすを半分に割り、できるだけ薄く切って「いしる」でさっと煮て食するというものである。

●能登特産のいしる

 「いしる」は能登特産の魚醤であり、他県では秋田の「しょっつる」も似たものと言える。醤油の一種であるが、「いしる」の他に、「よしる」、「いしり」とも呼ばれる。この呼び名の由来にも色々と説があるようで、原料の「いか」と「いわし」で違うとか、能登半島の外浦(日本海側)と内浦(富山湾側)で違うとか言われる。最近では欧米の日本食ブームに応えて、ニューヨークにまで販路を拡げようとする動きもあり、国際的な能登特産調味料と言われる日も近いかもしれない。

●ホタテ貝の容器

 今回は容器も趣向をこらしてあって、ホタテ貝の皿に盛られている。なすの他、いかの輪切り、くろも、ねぎ、大根、えのきが添えられて、その場で火を入れて、好みのタイミングで食べられる。十分に煮込んでから食するというよりも生に近い状態で食べる方が、味わいがよいようである。おそらく「いしる」の味とのバランスによるものであろう。

 地元の人の話によると、輪島には特産の漆器をつくる職人さんが多く住んでいるが、一般にお昼は自宅に帰って食事をするという習慣になっていた。そのため、早く食べられるこの料理法が発達したとのことである。郷土料理というものがどのようにして生まれるかという興味深い話の一例である。

【焼き物】
サザエ
輪島の郷土食/夏編・サザエのつぼ焼き3種(塩・醤油・みそ味)
 夏の焼き物はサザエというところだろうか。刺身もいいが、焼き物もまた違った味わいである。焼き方に趣向が凝らされていて、塩味、醤油味、味噌味の3種の食べ比べである。
 この3種のどれがよいかは、実は人それぞれの好みであり、会場で聞いてみても意見が分かれた。料理はおいしいばかりではなく、こういう話題を楽しめるのがよい。サザエ自体の味を重視する人は塩味を好み、調味料の味とのコラボレーションを期待する人は味噌味ということになるのではあるまいか。

【なすの舟焼き】
輪島の郷土食/夏編・なすの田楽
 代表的夏野菜のなすは焼いてもおいしい。特に大振りの長なすは、丸ごと焼いて、割いて生姜醤油で食べるのもおいしいが、半分に割って、味噌をつけて焼いたのも大変おいしい。形が伝馬船に似ているのでこの名が付いたと推測されるが、いい名である。甘味のある味噌とふっくらしたなすの食感がマッチして、ご飯と一緒に食べてもいいし、ビールのつまみにもいい。名実ともに夏の料理、というところである。

●多様な品種がある「なす」

 なすは実には多種多様な品種があり、インドが原産というが、国内でも1200種が知られるらしく、形にも卵状、丸状、長いも状など、地方によってもいろいろ特徴がある。なすの紫はナスニンという成分らしい。なすはあくが強く、変色しやすいので切ったはしから料理するか、水に曝しておくのがこつらしい。

【汁物】
そうめん
輪島の郷土食/夏編・輪島そうめん
 その昔、輪島といえばそうめん、という時代があったのだから、地元では輪島そうめんの復興を期待する向きも多いのではあるまいか。そんな期待を背負って、やはり「夏編」の汁物は輪島そうめんと相成った。

●アゴだしの素麺

 そうめんのうまさは、その麺の食感と出汁(だし)によると思われるが、今回のだしは、アゴ(いわゆるトビウオのこと)を使ったものである。アゴだしはトビウオを煮干のようにしたもので、輪島ならではのだしではあるまいか。輪島塗の地元だけあって、黒塗りの碗に盛られて、そうめんの白とマッチして食欲をそそる。そうめんの上にたいの切り身とからしが添えられている。そうめんの腰がしっかりしていてアゴだしとよい具合であり、いわゆる有名産地のそうめんに比べても遜色はなく、近い将来の更なる発展が期待される。

【炊き込みご飯、香の物、デザート/すいか】
輪島の郷土食/夏編・えんどうご飯、漬け物
 締めくくりは、エンドウの炊き込みごはんで、このエンドウが夏の食材となっている。その上に黄色の玉子焼きの短冊と細く切られた焼き海苔が散らされている。先の輪島そうめんの器とは対照的に、ご飯ものの器の内部は赤塗りで、卵の黄色と海苔の黒色がよい調和を保っている。食感としても、エンドウと卵と海苔がうまく混ぜご飯の味を作っている。
 
これに、なすときゅうりの香の物とデザートのすいかが、コースの最後としての収まりを演出した。